2016年10月8日土曜日

アルムヘム中央駅、解析技術と形態

アルムヘム中央駅 (Arnhem Central station, 2008)

アーキテクトはUNスタジオ。構造デザインはセシル・バルモンド(Arup)。
駅は、エントランスホールと、駐車場・バスターミナル・オフィス棟の2つが連続しています。
奇々怪々な形状をしたエントランスホールです。美しいのかどうかというより、面白い形だなという印象です。
特徴的なねじれたスロープは、飾りのように見えて、ねじれた中心の壁のようなものと、天井が垂れ下がってきた壁が建物を支える柱になっています。

構造の発想としては、バルモンドやコールハースの著書で見かける、壁であり、柱であり、床となる、自由な構造体の究極な形です。コンピューター設計ができることを形としてあらわした建築の中の一つといえるかと思います。

材料の進歩とともに、解析技術の進歩もあたらしい構造物を生み出します。

橋の世界でいえば、変形法による解析が一般化したおかげで、マルチケーブルの斜張橋が世界中で作られるようになりました。張力の相互作用が手計算では到底追いかけられなかった時代には、数本のケーブルに集約し、ケーブルの張り方はハープタイプの配置が主流でしたが、最近では、マルチケーブルの橋が中進国でも当り前のように設計されるようになりました。
これも、せいぜい30-40年くらい前に電算機の性能とそれを生かした数値解析ツールが発展してからの話です。

常識は常に更新していかないといけません。

この建物のように、床、柱、壁の概念が混ざると、おそらく建築設計基準にも、床、柱、外壁ごとに設計基準があり、または、材料ごとにコンクリートスラブ、複合柱などで基準が定めらていると思うので、途中で役目が変わっていく主構造に対して、そういう基準の壁を乗り越える必要があると思います。
設計者は、床と壁の遷移部分も自信をもって力学的に説明できると思いますが、基準には、経験的に積み上げられた規定、これも、過去の失敗、被災から学ぶたびに更新される貴重な積み重ねがあります。

少なくとも日本ではこのような基準内の適用の解釈を柔軟にすることは容易ではないだろうという気がします。

オランダはこのような構造物が多い気がしますがどうなのでしょう。

この常識を超えた構造を見ながら、新しい技術で複雑な構造を解くチャレンジだけではなく、現実社会の許認可を突破するだけのエンジニアの深い知見とエネルギーが必要だったのだろうなあと、想像しました。
このねじれが柱に見えてくるには時間がかかります。

コルビジェはじめ、現代建築ではスロープが建築の大事な接続に象徴的に使われているようですが、このホールはほとんどがスロープで階層が接続されています。
おかげで、入り口からプラットフォームへ行く流れ、トロリーターミナルからオフィスへ行く流れ、自由な人の動きを阻害するものはなにもなく、自由な空間になっています。

ところで、アーネムにはデュッセルドルフからICで到着する予定でしたが、寝過ごして次の停車駅ユトレヒトまで行ってしまいました。おかげで、この日の予定は2時間遅れ。
今も出発のピーが鳴ったときの焦りを思い出します。
寝坊の原因?デュッセルドルフ名物、わんこそば式アルトビール。ビールが空に近づくと、トレイにたくさんのグラスを積んだウェイターが新しいグラスを置いていきます。写真ではコースターに4本線が入っているので、250ml x 4=1L。
一日歩き回った後のアルトビールはほんとにおいしい。

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