2017年4月6日木曜日

エラスムス橋、場所を読み解く力

エラスムス橋、場所を読み解く力(1996, Lc=280m)

ロッテルダムのニューマース川に架けられた橋。行く前よりも実物を見て好きになった橋です。
デザインはUNスタジオ。UNスタジオはベン・ファン・ベルケル(Ben van Berkel)とカロリン・ボス(Caroline Bos)により設立されたアムステルダムの建築設計会社です。アジアでの設計事例も増えているようで、そのうち日本にも上陸するのではないでしょうか。
バックスパンは4本のケーブルでアンカーされています。
塔の下半分が橋軸方向に傾いていて、バックスパンのケーブルの塔の定着点は、塔の基礎位置よりもバックスパン側にあります。このためバックスパンケーブルの水平力だけでなく、鉛直力も、中央径間による塔基部回りのモーメントとつり合うように作用します。なので、ケーブル角度は通常の斜張橋よりも立ち気味です。

主塔上部で、中央径間側と側径間のそれぞれのケーブルが定着する範囲が異なるので、塔の部材に働く断面力が、曲げではなく、なるべく軸力で処理されるように、ケーブルの角度は塔の角度に近い立ち気味の角度の方が断面の設計上も都合良さそうです。
橋の片側にはレンゾピアノの設計によるKPNタワー。つっかい棒でビルを支えるようなこのビルの構造も強烈な印象を与えます。

エラスムス橋は跳ね橋とのことでどこが跳ねるのかと思ったら、バックスパンのケーブルのさらに岸側が跳ね橋になっているようです。橋の特徴的な形状とは関係ありません。
この橋のデザインは、もともとはそれほど好みではなかったのですが、周辺の構造物や景観を見ているうちに、主塔の高さや角張った形状、繊細というより剛な印象を与えるバックステイの存在が、周辺の景観に非常によく調和していると感じました。遺構として保存されているガントリークレーンごしに見ると、周辺の景色と一体で一つの景色を構成していると感じられます。

よい勉強になりました。
もっともWebサイトを見ると、強烈な曲線を多用したアンビルドなデザインも好きなようです。。
欧州の橋にしては主塔は太いように感じます。予想を超えるスケール感を感じたのは、このような経済効率からの解ではない構造が長大橋梁に適用されることは少ない、という先入観があったからかもしれません。
単純なデザインで骨太な部材。好みの形態です。

場所はメトロのWilhelminaplein, Rotterdam駅からすぐ。橋上を路面電車が走っていてアクセスは容易です。

0 件のコメント:

コメントを投稿