パリのオルセー美術館とチェイルリー公園を結ぶ歩道橋。現在の橋は三代目。最初の橋は1859年に架けられ、約100年後の1961年に鋼部材の腐食により架け替えられました。その後、仮橋を経て、現在の橋が設計コンペにより選ばれました。
今の正式名称はレオポール・セダール・サンゴール橋。
設計はマーク・ミムラム。
橋が架けられた頃に、このような浅いライズのアーチ橋にあこがれ、いつか見たいと思っていた橋でした。やっと見れたときには、ウッドデッキがすでに補修時期にさしかかった16年後になっていました。。
ライズ比1/15。通常は1/5-7程度なので、非常に浅く、美しさと引き替えにアーチリブの水平力は大きいはずです。
オルセー美術館の前にかかる。左のお兄さんは鍵売り。マジックも貸しています。公認?
断面形状が鋼構造ぽくないですが、そもそも鋳物で製作することが意図されていたそうです。V字ストラットの断面は曲線、アーチリブの構成断面は複雑な面取りがされています。このくらいの装飾をしないとおそらくセーヌ川の他の橋とバランスが取れないと思われます。
結果的には鋼板の溶接構造になっています。
色や材料感は、シモーヌドボーボワール橋同様に、旧来の重厚な低ライズアーチと共通しており、今どきの橋でありながら浮いた違和感を感じさせません。
鉛直材は、デザインコンセプトに基づき透過空間を確保するために、橋の中央に行くほど間隔が広くなっています。端部に行くほど鉛直材にかかる水平力が大きくなるので、構造的にも理にかなっています。
V字ストラットの下端は一般部は剛結ですが、もっとも基礎寄りの側径間の桁による鉛直力が大きい鉛直材は、断面が大きく、その基部は、温度変化などによる曲げモーメントが伝達されないようにピン構造となっています。
アーチリブはライズが浅いため、軸圧縮力も曲げモーメントも大きい。特に下側の圧縮力が強く、140mmの極厚板が使われています。アーチリブは2本のアーチを1組として、2面のアーチで構成されています。中央に向かって2本のリブの間隔が開くことは、歩道幅員への幾何学的な対応とともに、座屈耐力の向上も配慮されていると思われます。
アーチリブの高さは、端部で1250mm、中央部で550mmまで絞っています。橋の中央にダンパーの箱が見えます。この橋もロンドンのミレニアムブリッジのように開通後に揺れて一時閉鎖し対策が採られました。
大きな水平力が作用するアンカレイジの寸法は、ある文献では15m x 15m x 18mと書かれており、それほど深い支持地盤ではなさそうです。
設計中に下路の歩道は勾配がきつくて車いすが通れないなど問題はあったようです。薄い階段になっています。
床版の床組も単純なI断面ではなく、下フランジはゆるやかな曲線にデザインされています。世界の一等地なので、このくらいのこだわりはいいでしょう。
そろそろ大規模補修の時期ですね。ウッドデッキはこの覚悟が必要。
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