2017年6月10日土曜日

マドリードのザハデザインのホテル

シルケン プエルタ アメリカ Silken Puerta America 2005

マドリードの市内北東アメリカ通りにある五つ星ホテルです。中心部から少し離れているので、五つ星のわりには、120USDくらいで泊まれて割安です。
アクセスは、地下鉄の7番Cartagenaから歩いて5分くらいの近くにあり、不便はありません。Cartagena駅の目の前にはこのページ後半に記したマンションTorres Blancasがあります。

ホテルは12人の建築家が各フロアを設計しています。それぞれの建築家のコンセプトはプレスリリースより引用します。
---共同通信PRより----
12のフロアをそれぞれが異なる建築家、デザイナーが設計を担当した。
* 12階と正面の設計はジャン・ヌーベルによるもので、「ゲストが素晴らしい時を体験できるような」アートと建築のクロスオーバーを目指している。
* プリツカー賞受賞のザハ・ハディドは1階の設計を担当、デジタルデザインの新たな展開をすることで空間の流動性を特徴づけている。
* 2階はノーマン・フォスターが担当し。大都市の喧噪(けんそう)から切り離し、ゲストが静穏に過ごせるようなデザインを採用。
* 3階はデービッド・チッパーフィールドが設計し、ハンドメードのフローリング、壁掛けで飾った壁、白大理石を組み合わせた。
* エバ・カストロ、ホガー・ケーンのプラズマ・スタジオは4階の設計を担当。退屈で均質的なステレオタイプのホテルから離れ、表面部分を発展させることで空間の差異化を試みている。
* セビリアのビトリオ&ルチノは5階の設計を担当。ファッションでよく使っている概念的価値を応用することで、暖かく歓迎するような快適な雰囲気をスペースに与えている。
* 6階とバー部分はマーク・ニューソンが設計し、ゲストが「すぐに快適に感じられる」ように寒暖の材料を組み合わせることで、モダンでリラックスできる環境をつくり上げた。
* 7階はロン・アラッドが設計し、自らの設計観に従って表現し、想像性の高いスペースを創り上げた。アラッドの演出は大胆で、未来のホテルのあるべき姿を示している。
* キャスリン・フィンドレーは8階を担当し、雲の上に漂う感覚を夢見て体験できる瞑想の空間をつくり出した。フィンドレーとジェーソン・ブルージュは共同でゲストが通ると反応して点灯する双方向照明装置をロビーと廊下につけた。
* 9階はリチャード・グルックマンがオリジナルのアクリルと予想外の方法で多くの種類の素材を最大限活用
* 磯崎新は10階でミニマリストの感覚をゲストに提供し、繊細でリラックス感をあたえる日本的なテーマを強調した。
* 11階はハビエル・マリスカル、フェルナンド・サラスが共同で設計し、特にグラフィックデザインを通じてさまざまな感覚を刺激するような歓迎スペースをつくりだすことを試みた。
* ジョン・ポーソンがエントランスロビーとレセプションルームを担当し、「ホテルの真中安らぎと静寂を見つけられるスペース」をつくり出すことを試みた。
* クリスタン・リエーグル氏はレストランの設計を担当し、とくにガリシア、カタロニア、アンダルシア地方のスペイン文化の異なる要素を組み合わせた。
* テレサ・サぺー氏は644台を収容の駐車場用サインのデザインを担当。「個々の情緒に訴えるが、機能性が不可欠な場所」で色とグラフィックスを駆使。
* 庭園やホテルに隣接する公園などのランドスケーププロジェクトはハリエット・ボーン、ジョンサン・ベルが手がた。テーマは「草木と建物の融合」。
* アイソメトリクス照明とデザインの作業は建築家とともに行われ、それぞれの設計者のプロジェクトに適した照明デザインを採用。
* フェリペサエス・デゴルドア(SGAエステュディオ)がホテルの全体の構成を担当。
-----引用終わり-----

一階のザハデザインの部屋だけ少し高めです。ザハつながりで見つけたホテルだったので、当然ザハの部屋を選びました。

感想は、強烈です。ホテルの一室という感覚を感じる隙をモノコックの壁体で埋められます。隙がない。角がない。

廊下から部屋に入るまで、写真での想像をはるかに超えていて、はねまわってウワォ、ギエーと叫びそうでした。部屋でちょっと叫んでたかもしれません。写真を見ての通り、夜の方が宇宙船感あります。
ホテルの部屋は永久構造でもないし、何年も住むわけではないので、建築家の好み丸出しの部屋で一時の快楽を与えてくれるのは大歓迎です。
21時に到着。ザハのフロアのエレベーターホール。なんじゃこりゃー。
エレベーターホールの照明は刻々と色が変わります。
モノコックボディーの室内。見事に継ぎ目が見えません。いやらしく間接照明の隙間をのぞくとようやく人間の建物らしい蛍光灯や配線が見えます。設備工事も大変でしょう。
デザインされたカードキー
もう好きにして下さい。浴室の壁です。浴槽と壁が一体になって波打った造形なのですが、真っ白でカメラの焦点は合わないでレンズが出たり入ったりしているし、人間の目でもどう視界を捕らえていいか浴槽に入っても落ち着きません。
着陸用小型宇宙船

気をつけないとすねが痛い

このホテルの計画ではザハが一番楽しんだのではないでしょうか。

Torres Blancas 1968

ホテルからメトロ駅に向かって歩いて、駅の近くにある建物の造形にまたびっくりさせられました。さぞ、名のある建物でしょうと思ったら、なんと1968年の年代物のアパートでした。
設計はFrancisco Javier Sáenz de Oiza。円形のバルコニーの隣の四角い柱の中も室内のようです。
断面は下記リンク。
http://www.archdaily.com/157209/ad-classics-torre-blancas-francisco-javier-saenz-de-oiza
ビルのコンセプトはorganic living building。断面図を見ると、中央に2本の円形の柱があり、これがビルの幹であると説明があります。円形のテラスは生い茂る葉っぱのようです。高さは71m。1968年は日本では霞ヶ関ビルが完成した年です。このような時期に、スペインではバブリーなデザインコンセプトを前面に出した高層マンションが建築されたんですね。

また、黒川紀章の中銀カプセルタワービル(1973年)とほぼ同時期で、建築思想が突っ走ったマンションという点でイメージがかぶります。
コンセプトの善し悪しは置いておくと、見た目は有機的な感覚も入っていて私はこちらの方が毎日見るならわくわくしそうです。
時代が経って、建物は年季が入っていますが、各戸は住民がそれぞれテラスの手摺り・窓枠をリニューアルしているようです。植物で飾る人、テラスにする人、木製のパネルであることは統一されているようですが、コンクリートにはさまれたささやかな彩りがまたいい味です。

ベランダにガラスをはめて部屋のつづきにするのは、韓国で日常的に見かけました。寒いからという理由と、外に洗濯物を干すのは見苦しいとか、飛んで行ってしまうとかの理由もあるそうです。
最近、日本の都会のマンションの自治会のルールで、ベランダでふとん干しをしてはいけないと聞かされてびっくりしました。たたいてホコリが舞って近所迷惑だとか。
日射しをあびた布団に寝られないなんて、貴重な幸せの一つを放棄してますね。
下の階ほど手入れが悪い。うまくリニューアルすれば人気出そうだけど、建物の老朽化やいかに。

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