変わったポンツーン橋や回転橋のある新興のビジネス街、カナリーワーフから地下鉄で一駅、グリニッジ半島の先端にあるThe O2に寄りました。
設計はリチャード・ロジャース。構造設計はBuro Happold。
直径365mの世界最大のドームは、展示会の開催を目的に建設されたもので、展示会が終わって一度公開終了して再オープンしています。
当初は、期待を大幅に下回る入場者数、元々の大気汚染のひどい地域の印象であまり良いイメージで語られなかったようです。
現在は通信会社O2に命名権が与えられ、見学時には複合施設として観光客が多く訪れて賑やかでした。
ドームは12本のマストから繊維の屋根が斜吊りされた構造です。
膜はポリエチレンでは紫外線に弱いため、PTFEコートされたグラスファイバー製が選ばれています。25年以上の寿命があるそうです。PTFEコートは水に弱いグラスファイバーの保護用です。
膜構造の屋根は見た目にはサーカスのテントを大きくした感じで、特別なようには思いませんでしたが、365mという大きさになると、ケーブルアンカーも柱もなかなかの迫力です。
サーカスの屋根
http://www.archiexpo.com/ja/prod/canobbio/product-55251-1003511.html
タワーは長さ90mで324mmのパイプ8本の溶接構造。ピラミッド型のパイプの上に乗っています。中から見ると想像通りの大きな”テント”です。
吊り屋根の中心は直径30mのリングケーブルがあり、12本 x 48mmのロープで構成されています。タワーが高く、ケーブルの角度は比較的深い角度にされているので、水平力は軽減されているとはいえ、巨大な屋根を安定させるためには、膜を構成するケーブルに相当な張力を入れる必要があります。その中心となるこの30mのリングには7000kNの張力がかかっているそうです。
この30mのリングから、4周の中間リングを経て、外の360mのワイヤーに向かって72本のケーブルが張られ屋根を支えています。
ケーブルアンカレイジ。タワーへのケーブル(上)、膜屋根を支える放射状のケーブル(右)、円周方向に引っ張るケーブル(左)、の3組が固定されている。
それぞれのケーブルアンカレイジは、鉛直力に抵抗するコンクリートブロックと、円周方向にリング状に埋められた幅6m、深さ0.5mのコンクリートストラットで水平力に抵抗しています。
屋根の上は橋があり観光コースになっている
ウミウシみたいな特徴のある面白い形状で、存在は嫌いではないですが、ケーブルがごちゃごちゃしていて綺麗かというとビミョー。近くのRoyal Victoria Bridgeとともに、イギリス人はこういういかにも異論が出そうな物を作ってしまうの好きねー。そこは大好きです。
実際に、最近のロンドンの変わった橋で、St Saviours Dock Footbridge(ステンレスの歩道橋), Great Wharf Road Bridge(片岸を持ち上げるアーチ橋)の二つは2017年には供用されていません。危険は困るけど、挑戦を認める社会は健康的な感じがします。