ニューカッスルのタイン川には、鉄の橋の黎明期と現代を代表する橋が揃っています。
こちらは黎明期の橋。Newcastle Central駅からすぐ、徒歩5分。
町の高さに架けられたハイレベルブリッジと手前のローレベルに架けられた旋回橋
設計はRobert Stephenson(stíːvnsən)。橋の設計で有名なのはスティーブンソン親子の息子の方です。スティーブンソンはここニューカッスルの出身です。
ニューカッスル側入り口
リハビリ後はニューカッスルからゲーツヘッドへの一方通行となり、バスとタクシーのみ通行が許され、3トンの重量制限がされています。鉄道は斜め横から上路に入ってくる。
ゲーツヘッド側出口
チューブ橋も桁高を高く取った自由な発想の橋で好きですが、設計思想としては、軸力部材を使った方が無駄がなく、スマートな設計になったという評価がされているかもしれません。
私は、ただの工業製品と感じられない自由さがあって両方とも好きです。
図面を手で引くと、自然に、人間の息吹が感じられるんですかねぇ。リブの間隔とか、添接の形をとっても、あながち手仕事とデジタル仕事の差があるという情緒的な解釈は間違っていない気がします。
最新の橋は、溶接構造、さらには、グラインダーがけが、最近の鋼橋の美観を確保する手段で、たしかにそれも多くの場合正解だと思いますが、隅田川の橋の添接を見てもじっと眺めていたくなるようなものがあります。
材料は、アーチリブは鋳鉄製、吊材は錬鉄製となっています。引張に対してもろい鋳鉄をアーチリブのみに使っているのは合理的です。また、当時は錬鉄のリベット接合が信用されていなかったためアーチリブには使われなかったという理由も記述されています。
160年の間に、鉄道が3レーンから2レーンになったり、路面電車が走り、鉛直材が追加になったり上路が鋼床版に変えられたりいろいろ変遷があったようです。
下流の鉄道路線を代替する橋梁
鋼材重量は5500ton。1100kg/m2と今のそのへんの高架橋と比べると3倍以上の鉄の塊がむき出しなので、見た目にも重量感があり鉄好きには大迫力です。
構造は、下弦材が弱そうですが、構造系はローゼアーチです。世界初の道鉄併用橋で、アーチの上下路に走行部があるという、ロイヤルアルバート橋と共に、オンリーワンな構造形態がこの時代に作り出されているというのは驚異的です。
現代のように構造にカテゴリー分けがなく、力の流れに従い自然に発想した結果なのかもしれません。
鉄、鉄、鉄
アーチは2面で一組。水平に結合されたアーチの中が歩道です。
2001年から2008年に3年間の下路の道路部分を閉鎖して、42milポンド=63億円を掛けたリハビリが行われています。新設橋並の費用を掛けた、産業遺産のリハビリは、強烈にひび割れた部材の補修、見えない床組部材の新設、床版の取り替え、装飾品のリハビリも含む、それこそ架け替え並の大工事が行われたようです。
面白いのは、床版は、きちんと木材床版で修復され、その上にアスファルト舗装がされています。
下から覗くと、木材床版がわかります。検査車が新設されたそうです。
重厚感の中の曲線と橋脚のあざとくない装飾、脚のスケール感が上部工とバランスが良いです。色もいい組合せ。年代の落ち着きは追いつきようがないですが、地形の一部のような安定感の好ましさを見ると、橋単体の軽快さと逆のアプローチもあるのかなと考えさせられます。
イギリスで大事にされている産業革命終盤の遺産が生活に息づいている様子を見ると、イギリスがヨーロッパに対して特別な地位を持っていると考えることの背景が少しだけ理解できる気がします。ブレグジットもいたしかなたし。。やはりその時代、イギリスは圧倒的に世界のパイオニアだったんだなあということと、その精神を尊重にする現在のイギリス社会。
最近、BBCをインターネットで聞くのですが、BBCで聞く英国議会の激しい議論の応酬も議会内に積み重ねた伝統に対する自負が感じられ、伝統の力が生活から乖離していないのかなと想像します。
0 件のコメント:
コメントを投稿