2017年9月24日日曜日

ミレニアムドーム改めThe O2

The O2, Millennium Dome, 2000

変わったポンツーン橋や回転橋のある新興のビジネス街、カナリーワーフから地下鉄で一駅、グリニッジ半島の先端にあるThe O2に寄りました。
設計はリチャード・ロジャース。構造設計はBuro Happold。
直径365mの世界最大のドームは、展示会の開催を目的に建設されたもので、展示会が終わって一度公開終了して再オープンしています。
当初は、期待を大幅に下回る入場者数、元々の大気汚染のひどい地域の印象であまり良いイメージで語られなかったようです。
現在は通信会社O2に命名権が与えられ、見学時には複合施設として観光客が多く訪れて賑やかでした。

ドームは12本のマストから繊維の屋根が斜吊りされた構造です。
膜はポリエチレンでは紫外線に弱いため、PTFEコートされたグラスファイバー製が選ばれています。25年以上の寿命があるそうです。PTFEコートは水に弱いグラスファイバーの保護用です。

膜構造の屋根は見た目にはサーカスのテントを大きくした感じで、特別なようには思いませんでしたが、365mという大きさになると、ケーブルアンカーも柱もなかなかの迫力です。
サーカスの屋根
http://www.archiexpo.com/ja/prod/canobbio/product-55251-1003511.html

タワーは長さ90mで324mmのパイプ8本の溶接構造。ピラミッド型のパイプの上に乗っています。中から見ると想像通りの大きな”テント”です。

吊り屋根の中心は直径30mのリングケーブルがあり、12本 x 48mmのロープで構成されています。タワーが高く、ケーブルの角度は比較的深い角度にされているので、水平力は軽減されているとはいえ、巨大な屋根を安定させるためには、膜を構成するケーブルに相当な張力を入れる必要があります。その中心となるこの30mのリングには7000kNの張力がかかっているそうです。
この30mのリングから、4周の中間リングを経て、外の360mのワイヤーに向かって72本のケーブルが張られ屋根を支えています。
ケーブルアンカレイジ。タワーへのケーブル(上)、膜屋根を支える放射状のケーブル(右)、円周方向に引っ張るケーブル(左)、の3組が固定されている。

それぞれのケーブルアンカレイジは、鉛直力に抵抗するコンクリートブロックと、円周方向にリング状に埋められた幅6m、深さ0.5mのコンクリートストラットで水平力に抵抗しています。
屋根の上は橋があり観光コースになっている
ウミウシみたいな特徴のある面白い形状で、存在は嫌いではないですが、ケーブルがごちゃごちゃしていて綺麗かというとビミョー。近くのRoyal Victoria Bridgeとともに、イギリス人はこういういかにも異論が出そうな物を作ってしまうの好きねー。そこは大好きです。
実際に、最近のロンドンの変わった橋で、St Saviours Dock Footbridge(ステンレスの歩道橋), Great Wharf Road Bridge(片岸を持ち上げるアーチ橋)の二つは2017年には供用されていません。危険は困るけど、挑戦を認める社会は健康的な感じがします。

*参考、Design and Construction of the Millennium Dome, UK, Ian Liddell, Paul Westbury, Buro Happold, Bath, UK

アナコンダ橋

アナコンダ橋(パイソンブリッジ、ボルネオ・スポーレンブルグ、2001)

オランダ、アムステルダム東側の運河にかかる橋です。設計はエイドリアングース(West8)
構造はラチストラス。欧州の橋梁らしく、格点は全て溶接です。あまり製作精度は問われなさそう。形鋼の組合せなので工事費は抑えられ、かつ、シンボリックな形状。
このような運河の先端という場所にはいいのではないでしょうか。
これが、駅前の近代的なビル群と並んでしまうと部材のチープさが見えてしまうかもしれません。

こちらはアナコンダ橋より運河の奥の方にかかる橋。
同じコンセプトの構造を並べるというのは、意図的に並べると面白いです。同じコンセプトが並んだケースで、同じアムステルダムで空港近くに並ぶ3つのカラトラバの橋の場合は、3つは多いなという感想でした。
ハンブルクで見た、同じ濃色の橋を湾岸地域に並べたケースは非常によかったです。この差が何かというと、やはり、個々の橋がきちんと景観にあっているというのが前提条件ということと思います。
場所は、アムステルダムの東側。アムステルダム中央駅とつなぐ48番のバスの終点がすぐ近くです。下記のようにトラムから歩いても行けます。
周辺の建築群の案内板
橋への移動は、ゴッホ美術館と国立美術館を見た後に、トラムの10番に乗ってEerste Leeghwaterstraatから歩きました。いろいろなデザイン性豊かな建築物を見ることが出来るので、散策するのは楽しいです。

この周辺では、家や事務所の前に垣根とかがなく、道路に面した家が広いガラス窓を通して部屋の中が思い切り開放的に見えます。部屋は綺麗に整理されていて、すべてがデザイン事務所に見えます。
イギリスの家庭のよく手入れされた庭を見るような感じです。
人の家を覗いてはいけないと思いながら、見られてもいいようにインテリアを楽しんでいるのではないかと感じます。私には無理です。

オランダに限らず、欧州で町歩きが新鮮に感じられるのは規格化されたコンビニがないからかもしれません。日本ではコンビニ様のおかげで生活が楽なのでこれは難しい。
そういえばコンビニが流行るところは日本や東南アジアのような享楽的な地域が多いような。偏見でしょうか。