2018年5月20日日曜日

ハンブルグのくの字橋 Museum bridge

ハンブルクのMuseums footbridge (Hamburg, Germany 2007)

博物館にかかる平面にくの字の線形をもつ歩道橋。アーキテクトは、パリのシモーヌドボーボワール橋をデザインした、オーストリア出身のディトマール・ファイシティンガー(Dietmar Feichtinger)。
実に博物館の入り口という場所にふさわしい佳作です。建設費は1.2億円(0.9M Euro)。設計費は不明。
橋は、再開発により、統一された美観を獲得した煉瓦街ハーフェンシティーをエルプフィルハーモニー(ヘルツォーク・ド・ムーロン)から、西に1km歩いたところにある、国際海洋博物館の前の運河に架かります。
この国際海洋博物館も、ハーフェンシティーのリノベーションの一環で、1888年に建設された赤レンガ倉庫を2007年に再構築された建物です。

ファイシティンガーのデザインする橋は、シモーヌドボーボワール橋(レンズトラス)、Valmy歩道橋(リングガーダー)、Three Countries Bridge(最長のアーチ歩道橋)と構造が挑戦的なイメージでしたが、この歩道橋は、これ以上ない単純な単純桁です。
楽しんでますね。

人間の視線が近くなる橋では、橋のスケールと近くなってしまう詳細構造、接続金具とか、溶接仕上げにより目が行ってしまうので、細かな構造を排して、形状だけに視線を誘導するというのも、デザイナーの見せたい物を実現するひとつのアプローチだと思います。
この橋のポイントは、重力下で生きる人間の感覚に反して、水平面内でくの字に曲げられている危うさです。この危うさが一番感じられる視点は、おそらく上から見たところで、なかなか写真を撮ってもそれが感じられないのは少し残念。また、斜め下からも桁高の変化がみれて面白そうですが、桁から下も運河の切り立った壁で、美の重要な要件、なんだこれは(by岡本太郎)、と言わせる視点がないのがもったいないです。
安全柵や排水は綺麗な処理がされています。さすが。

Hafencity地区の町並み

この橋のあるハンブルグのハーフェンシティーは、市街中心から最も近い埠頭地区で、1991年から再開発が進められています。赤煉瓦の倉庫と工場地区だったものを、赤煉瓦の建物を生かしつつ、オフィスビルや住宅街に作り替えられています。

155ヘクタールの地域は、1999年のコンペで優勝したオランダのキースクリスチャンとドイツのAstoc archtects & plannerによりマスタープランが計画されています。
赤レンガ倉庫地区はだいぶ建設が終わったようですが、地域の東側はまだまだこれからの建設です。
再開発前http://www.hafencity.com/より借用
再開発後 Hafencity Hamburg Waterfront Archtectural Guideより。
エルプフィルハーモニーの土台の建物がそのまま生かされていることがわかる。

地域はエルプハーモニーから、エルベ川のレンズトラス橋があるところまで東西に3kmの地域です。ドックが櫛形に入りこんでいるので、楽しい橋もたくさんあります。
周囲の建物。ハンブルク港湾地区再開発の象徴エルプフィルハーモニー。
エルプフィルハーモニーには、2017のG20で各国首脳がコンサートに招待されました。解説では、オペラハウスのような象徴的な建物をということでコンペにかけられたそうです。ヘルツォークドムーロンにしては、外見は飛ばしすぎていない、場所に合った建築だと思います。
周囲の建築が2000年以降にむちゃくちゃな形態を競うようにデザインされているからかもしれません。ひとくくりにしてしまうのは失礼ですが、場所を読み解く力があるアーキテクトもCGエンジニアも玉石混合で一気に街を作り上げている印象があります。

エルプフィルハーモニーの、帆の部分は新しい構造で、下の赤煉瓦は、1966年に再建された倉庫を補強したものです。
曲面ガラスの表現はここまでこだわった理由を実感するのに時間がかかりそうです。
古い倉庫をリノベーションした建物とコンセプトを一致させた新建築が同居する。エルプフィルハーモニーのみが110mで他の建物は、教会の尖塔の高さを超えないように制限されている。
市街地の橋の高さは一様に高い。エルベ川の洪水の備え、8.3mを最高水位として市街地が計画されている。
再開発地区の統一された町並み。建物の形はそれぞれ個性的だけど、コンセプトに従い完全な調和が図られている。ただ、正直な印象は、一つ一つの建物は居心地がよさそうですが、連続して完璧な調和が図られ、また、個性の強い建築が集合すると、それはそれで目眩のする光景です。住んでる人がいたら精神衛生上なにか起きそうというか、気分が悪くならないかな。

ハンブルグ滞在は、EasyJetが2時間遅れたおかげで、もともと無茶だったのが、さらに2時間で弾丸ランニング見学でした。しかも次々に現れて足を止める、驚くべきデザインの数々。
帰りは、重厚な眼鏡橋の中央車線のBRTレーンをタクシーが突っ走ってくれたおかげで、ぎりぎり当日中にベルリン到着のICEに乗れました。走った走った。
ベルリンプラッツ広場にて

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