1.最初の防水対策
防水対策の第一歩として、ウォールの上にはポリカの波板をつけています。これはあるかないかで大違い。波板の下になる合板の裏と骨組みは2年後もまったく変状ありませんでした。
初期の塗装は、木材保護のために、防水層を作った方が長持ちするだろう程度に考えて、パワーテックを二度塗りしました。芸術的に仕上げる必要はないのでローラーでびゃーっと2度塗り。気楽です。裏の骨組みの木材にも塗りました。
さらに、1年後に変色したところとこば面を一部上塗りしました。
2.2年経過後の状況
丸2年が経過し、雨水が直接あたる表面から塗料が膜になって剥がれ始めました。
合板の素材は剥がれたところの下が黒く痛み始めた感じです。
塗膜が木に密着しているところの木の色はまだまだきれいです。
また、裏面は2年以上経ってもほとんど変化なしです。日光にもあたっていないので、変色もありません。
雨の日に撮影したウォールの状態です。
裏面は屋根のおかげで雨水が侵入せずきれいな状態です。
表面は、吹き込みの激しい下側のコーナーが濡れています。やはりこの部分は木材の傷みが早いです。
屋外の木材は、
・無対策で2-4年で腐朽
・加圧注入防腐剤で10年
・木材保護着色塗料では、キシラデコールのような含浸型で2-3年の塗り替え
・造膜型で4年での塗り替え
が目安だそうです。(参考)防腐処理ごとの耐久年数、林産試験場
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/0404/2.htm
最初に使ったパワーテックは塗膜で防水効果を高める造膜型ですが、木材の防腐効果はないということが分かりました。
この塗料では、塗膜がある限り木材は健全ですが、塗膜が離れてしまったら腐食は無対策同様に進行してしまいます。
2.再塗装の塗料選び
ウォールのこれからのライフサイクルを考えて、2年目で塗装系の見直しです。
まずは、再塗装の塗料選びです。
まず、ホームセンターで買ってみたのが、ニッペの油性木部保護塗料です。
この塗料は、「合成樹脂調合ペイント」に分類されます。「合成樹脂調合ペイント」はポリエステル樹脂系塗料のアルキド樹脂塗料の中で長油性に分類されるものの”JIS規格名”です。いわゆるペンキの分類になります。
塗膜が作られるので、いつかは塗膜が割れて剥がれてしまいます。
似た用語で、「合成樹脂塗料」がありますが、合成樹脂塗料はアクリルやウレタン、シリコンなどの合成樹脂を原料にしてつくられた塗料の総称で、「合成樹脂調合ペイント」はこの一部になります。ただし、「合成樹脂調合ペイント」は、同じ合成樹脂塗料の中では、ウレタン、シリコン樹脂塗料と比べると塗膜の耐久性は劣ります。
といったことを学んで、屋外クライミングウォールにふさわしい塗料を再度探し直しました。
なお、塗料の種類について、下記のページが知りたいことが簡潔に書かれていて参考になりました。
https://www.kokoroiki.com/architecturalfinish/wood.html
ここで、今後のメンテナンス最小化を考えると、木材の塗料選びには2つの方向性があります。
(塗料グループ1) 初期耐久性の高い塗料で塗り替え間隔を延ばす
造膜タイプの塗料で、その中でも高耐久性塗装を選定する。この場合ウレタン樹脂塗料が市販品ではもっとも耐久性が高そうです。
製品名では、ニッペ油性ウッディガード(ウレタン樹脂塗料)、アサヒペン油性ウッドガード(アクリルウレタン樹脂塗料)など。
鋼構造の塗装で、メッキを除けば、市場に出回っている中で最も耐久性の高い塗装はフッ素塗装です。ただ、木材の塗装では、材料の伸縮が大きいため、表面の塗膜の耐候性だけ良くても割れてしまい、こちらが塗料の寿命を決めてしまうので、物質としては優れているもののフッ素塗装の製品はないようです。
このタイプは、4年くらいの耐久性がありそうなので、しばらく放っておけます。
デメリットは塗膜が形成されるため、寿命が来ると塗膜割れ、めくれが生じ、塗り直し時にこの塗膜の除去をしなければならないことです。
(塗料グループ2) 耐用年数は短いが塗り替えが容易な塗料
塗膜をつくらない浸透タイプの塗料を選定する。
浸透タイプは、造膜タイプと比較して1回目の耐用年数は短いものの、塗膜がないため、再塗装時に下地処理に劣化塗膜の剥離作業がなく、重ね塗りが可能で、3年後の作業性が良好です。
製品名では、キシラデコール、和信化学工業のガードラックなど。
公共構造物であれば、一回ごとの工事費は高くても、回数の少ない(塗料グループ1)がライフサイクルコストが安いということで選ばれるかもしれませんが、塗る相手は家の庭でいつでも手出しできるのと、塗膜はがしの労力は、再塗装をする気力を奪う面倒さであることを今回学んだので、迷わず(塗料グループ2、浸透タイプ)を選ぶことにしました。
製品選びでは、浸透タイプと称しながら、ごく薄い塗膜を作る製品もあり、なかなか正体を知るのは大変です。
たとえば、ニッペの「水性ウッディガード」は、ある情報では浸透タイプに分類されていましたが、特殊アルキド・アクリルエマルションペイント(アクリルを乳化した塗料)で、浸透+ごく薄い塗膜を作り耐久性を向上させる塗料です。
さらに同じ商品名「ウッディガード」でも”油性”ウッディガードはウレタン樹脂塗料で、造膜タイプだったりします。
結局、塗料は和信のガードラックラテックスを選びました。
ホームページに塗り直しのタイミングや提案が書かれており、塗り重ねが問題ないことが明記され、塗装計画が立てやすいです。
木材の塗料が3年で塗り直しが必要なことをきちんと書いているページはなかなかなく、長期間の塗装計画案が提案されている和信さんは誠実であると感じました。
http://guardlac.jp/study/timing
また、キシラデコールの上にガードラックアクアを上塗りできるか和信化学に問い合わせた方が、問題ないとの回答を得たとの情報があり、塗料の付着がよさそうです。
将来、より傷んだときの塗り重ねも容易そうだという点も安心感になりました。
塗り直しの時にはウッドリカバリーという塗装の上から染み抜きをする製品もあるようです。
3.古い塗膜はがし
塗料も決めていざ塗り直し。
再塗装にあたって、非常に大変だったのは、剥がれかけの塗装の塗膜剥がしです。
剥がれかけたところは、アラカンやスクレーパーをつかってばりばり剥がれてしまうのですが、塗膜として木材にしっかり付着した健全なところを剥がすのが大変です。
試行錯誤
・ホルダーに付けた紙ヤスリ(×)・・・いつもはパワフルなこいつも、健全なところの塗装はがしは粉が出るだけでまったく母材に到達する気配がない。
・アラカン(×)・・・剥がれかけの塗膜はがしは紙ヤスリより剥がせる。ただし、健全な塗膜には傷が付くだけ。
・オービタルサンダー(×)・・・これも紙ヤスリと大差なし。
・スクレーパー(△)・・・浮いてしまった塗膜はがしは、スクレーパーで削るのが簡単。100均で買ったものが活躍しました。健全な塗膜にはもちろん役に立ちません。
・ベルトサンダー(×)・・・研磨力は強く、期待大に見えますが、パワーがありすぎて、塗膜を溶かして表面にべたーっと黒く伸びて古いガムのように貼り付いてしまいます。一度貼り付くとこれを剥がすのは大変。後で塗膜剥がし剤を使った後の広い面積の素地調整にはさすがのパワーを発揮しました。
・グラインダー①紙ヤスリの多羽根ディスク(×)・・・まあまあ削れますが、削れる面積が小さく、その部分がえぐれてしまう。塗料が溶けてべたーっと溶けて貼り付くのと、ディスクも目詰まりします。
・グラインダー②ナイロンディスク(○)・・・目詰まりせず、付着の強い塗料もなんとか剥がせます。これが削り系工具の中では一番使えました。しかしナイロンディスク1枚で合板1枚持ちません。
以上の削り系の工具では、ディスクグラインダーにナイロンディスクの組合せが最も使えましたが、それでも、合板5枚分の面積の塗膜はがしを終わるのはいつになることやら、という効率の悪さです。これをやるくらいなら、新しい合板を買って付け替えた方がいいです。
最後に、塗膜剥離剤(◎)
きっと、木材を傷めて汚くなるだろうなーと予想して、最後の選択肢になったのですが、これがなかなか優秀でした。
塗膜の材料と化学反応してぶよぶよした物質に変化させます。おそらく反応し易い、し易くない塗料の種類があるのと、適量をけちると反応しきれないことくらいが問題で、剥がした後に、塗装準備でヤスリがけするので見た目も問題ありませんでした。
合板上のパワーテックをはがすときの例ですので、はがす塗料の種類によっては全く違う結果になるかもしれません。
ついでに作業台の天端板。こちらは手っ取り早くあきらめて、近所の製材所でプレーナーを掛けてもらいました。ご厚意により購入材と同じ100円+消費税で、あっという間に新品状態。
防水対策の第一歩として、ウォールの上にはポリカの波板をつけています。これはあるかないかで大違い。波板の下になる合板の裏と骨組みは2年後もまったく変状ありませんでした。
初期の塗装は、木材保護のために、防水層を作った方が長持ちするだろう程度に考えて、パワーテックを二度塗りしました。芸術的に仕上げる必要はないのでローラーでびゃーっと2度塗り。気楽です。裏の骨組みの木材にも塗りました。
さらに、1年後に変色したところとこば面を一部上塗りしました。
2.2年経過後の状況
丸2年が経過し、雨水が直接あたる表面から塗料が膜になって剥がれ始めました。
合板の素材は剥がれたところの下が黒く痛み始めた感じです。
塗膜が木に密着しているところの木の色はまだまだきれいです。
また、裏面は2年以上経ってもほとんど変化なしです。日光にもあたっていないので、変色もありません。
木材の弱点であるこば面は、1年目に厚く塗り直したのと、ざらつきが付着を良くしているのか健全でした。
雨の日に撮影したウォールの状態です。
裏面は屋根のおかげで雨水が侵入せずきれいな状態です。
表面は、吹き込みの激しい下側のコーナーが濡れています。やはりこの部分は木材の傷みが早いです。
屋外の木材は、
・無対策で2-4年で腐朽
・加圧注入防腐剤で10年
・木材保護着色塗料では、キシラデコールのような含浸型で2-3年の塗り替え
・造膜型で4年での塗り替え
が目安だそうです。(参考)防腐処理ごとの耐久年数、林産試験場
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/0404/2.htm
最初に使ったパワーテックは塗膜で防水効果を高める造膜型ですが、木材の防腐効果はないということが分かりました。
この塗料では、塗膜がある限り木材は健全ですが、塗膜が離れてしまったら腐食は無対策同様に進行してしまいます。
2.再塗装の塗料選び
ウォールのこれからのライフサイクルを考えて、2年目で塗装系の見直しです。
まずは、再塗装の塗料選びです。
まず、ホームセンターで買ってみたのが、ニッペの油性木部保護塗料です。
この塗料は、「合成樹脂調合ペイント」に分類されます。「合成樹脂調合ペイント」はポリエステル樹脂系塗料のアルキド樹脂塗料の中で長油性に分類されるものの”JIS規格名”です。いわゆるペンキの分類になります。
塗膜が作られるので、いつかは塗膜が割れて剥がれてしまいます。
似た用語で、「合成樹脂塗料」がありますが、合成樹脂塗料はアクリルやウレタン、シリコンなどの合成樹脂を原料にしてつくられた塗料の総称で、「合成樹脂調合ペイント」はこの一部になります。ただし、「合成樹脂調合ペイント」は、同じ合成樹脂塗料の中では、ウレタン、シリコン樹脂塗料と比べると塗膜の耐久性は劣ります。
といったことを学んで、屋外クライミングウォールにふさわしい塗料を再度探し直しました。
なお、塗料の種類について、下記のページが知りたいことが簡潔に書かれていて参考になりました。
https://www.kokoroiki.com/architecturalfinish/wood.html
ここで、今後のメンテナンス最小化を考えると、木材の塗料選びには2つの方向性があります。
(塗料グループ1) 初期耐久性の高い塗料で塗り替え間隔を延ばす
造膜タイプの塗料で、その中でも高耐久性塗装を選定する。この場合ウレタン樹脂塗料が市販品ではもっとも耐久性が高そうです。
製品名では、ニッペ油性ウッディガード(ウレタン樹脂塗料)、アサヒペン油性ウッドガード(アクリルウレタン樹脂塗料)など。
鋼構造の塗装で、メッキを除けば、市場に出回っている中で最も耐久性の高い塗装はフッ素塗装です。ただ、木材の塗装では、材料の伸縮が大きいため、表面の塗膜の耐候性だけ良くても割れてしまい、こちらが塗料の寿命を決めてしまうので、物質としては優れているもののフッ素塗装の製品はないようです。
このタイプは、4年くらいの耐久性がありそうなので、しばらく放っておけます。
デメリットは塗膜が形成されるため、寿命が来ると塗膜割れ、めくれが生じ、塗り直し時にこの塗膜の除去をしなければならないことです。
(塗料グループ2) 耐用年数は短いが塗り替えが容易な塗料
塗膜をつくらない浸透タイプの塗料を選定する。
浸透タイプは、造膜タイプと比較して1回目の耐用年数は短いものの、塗膜がないため、再塗装時に下地処理に劣化塗膜の剥離作業がなく、重ね塗りが可能で、3年後の作業性が良好です。
製品名では、キシラデコール、和信化学工業のガードラックなど。
公共構造物であれば、一回ごとの工事費は高くても、回数の少ない(塗料グループ1)がライフサイクルコストが安いということで選ばれるかもしれませんが、塗る相手は家の庭でいつでも手出しできるのと、塗膜はがしの労力は、再塗装をする気力を奪う面倒さであることを今回学んだので、迷わず(塗料グループ2、浸透タイプ)を選ぶことにしました。
製品選びでは、浸透タイプと称しながら、ごく薄い塗膜を作る製品もあり、なかなか正体を知るのは大変です。
たとえば、ニッペの「水性ウッディガード」は、ある情報では浸透タイプに分類されていましたが、特殊アルキド・アクリルエマルションペイント(アクリルを乳化した塗料)で、浸透+ごく薄い塗膜を作り耐久性を向上させる塗料です。
さらに同じ商品名「ウッディガード」でも”油性”ウッディガードはウレタン樹脂塗料で、造膜タイプだったりします。
結局、塗料は和信のガードラックラテックスを選びました。
ホームページに塗り直しのタイミングや提案が書かれており、塗り重ねが問題ないことが明記され、塗装計画が立てやすいです。
木材の塗料が3年で塗り直しが必要なことをきちんと書いているページはなかなかなく、長期間の塗装計画案が提案されている和信さんは誠実であると感じました。
http://guardlac.jp/study/timing
ガードラックProはにおいが強いようなので、ガードラックラテックスにしました。
ガードラックラテックスを塗った状態。塗膜がなく光沢はない。木材が塗料を吸い込み表面は木目が見える。さらさらした表層で好印象。
色はハニーメープル。ガードラックに、ナチュラルという透明のように見える色がありますが、これはナチュラル風の色が付くものです。
将来、より傷んだときの塗り重ねも容易そうだという点も安心感になりました。
塗り直しの時にはウッドリカバリーという塗装の上から染み抜きをする製品もあるようです。
3.古い塗膜はがし
塗料も決めていざ塗り直し。
再塗装にあたって、非常に大変だったのは、剥がれかけの塗装の塗膜剥がしです。
剥がれかけたところは、アラカンやスクレーパーをつかってばりばり剥がれてしまうのですが、塗膜として木材にしっかり付着した健全なところを剥がすのが大変です。
試行錯誤
・ホルダーに付けた紙ヤスリ(×)・・・いつもはパワフルなこいつも、健全なところの塗装はがしは粉が出るだけでまったく母材に到達する気配がない。
・アラカン(×)・・・剥がれかけの塗膜はがしは紙ヤスリより剥がせる。ただし、健全な塗膜には傷が付くだけ。
・オービタルサンダー(×)・・・これも紙ヤスリと大差なし。
・スクレーパー(△)・・・浮いてしまった塗膜はがしは、スクレーパーで削るのが簡単。100均で買ったものが活躍しました。健全な塗膜にはもちろん役に立ちません。
・ベルトサンダー(×)・・・研磨力は強く、期待大に見えますが、パワーがありすぎて、塗膜を溶かして表面にべたーっと黒く伸びて古いガムのように貼り付いてしまいます。一度貼り付くとこれを剥がすのは大変。後で塗膜剥がし剤を使った後の広い面積の素地調整にはさすがのパワーを発揮しました。
・グラインダー①紙ヤスリの多羽根ディスク(×)・・・まあまあ削れますが、削れる面積が小さく、その部分がえぐれてしまう。塗料が溶けてべたーっと溶けて貼り付くのと、ディスクも目詰まりします。
・グラインダー②ナイロンディスク(○)・・・目詰まりせず、付着の強い塗料もなんとか剥がせます。これが削り系工具の中では一番使えました。しかしナイロンディスク1枚で合板1枚持ちません。
以上の削り系の工具では、ディスクグラインダーにナイロンディスクの組合せが最も使えましたが、それでも、合板5枚分の面積の塗膜はがしを終わるのはいつになることやら、という効率の悪さです。これをやるくらいなら、新しい合板を買って付け替えた方がいいです。
最後に、塗膜剥離剤(◎)
きっと、木材を傷めて汚くなるだろうなーと予想して、最後の選択肢になったのですが、これがなかなか優秀でした。
塗膜の材料と化学反応してぶよぶよした物質に変化させます。おそらく反応し易い、し易くない塗料の種類があるのと、適量をけちると反応しきれないことくらいが問題で、剥がした後に、塗装準備でヤスリがけするので見た目も問題ありませんでした。
合板上のパワーテックをはがすときの例ですので、はがす塗料の種類によっては全く違う結果になるかもしれません。
塗膜剥がし後、ベルトサンダーで素地を作りガードラックラテックスを塗って再塗装完了
さて何年持つか楽しみです。
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