2017年3月11日土曜日

プルメルエントの二重橋

プルメルエントの二重橋 (Melkweg Bridge, Lc=66m, アーチ構造は40mくらい 2012)

アムステルダムの北プルメルエントにある運河を渡る歩道橋です。設計はNEXT Architects。
写真ではわかりにくいですが、S字の平面の橋と太鼓橋の2つの渡り方が出来る歩道橋です。S字の橋は太鼓橋の下をくぐります。
歩道の左に船用の信号がみえる
橋の下の運河を船が通るときに、S字の橋は旋回して通れなくなります。この通れないときは航路のクリアランスが十分あるアーチ橋を渡ることが出来るという仕組みです。
ちょうど写真を撮っているときに声を掛けられた方に、船が通るときに使うんですよね?と聞いたところ、目的をひととおり説明してくれましたが、使っているかというと、うーん、そうねー。。という感じでした。
面白いデザインの橋として親しまれているが、それほど実用的にはとらえられていなさそうな印象でした。

私が見てるときにアーチを渡った子供は、S字橋を渡る親より早く渡れたと楽しそうです。周囲に高い建物があまりなく展望台にもなっているようで、機能だけではなくいろいろな使われ方で親しまれている橋のようです。
S字のコーナーのジョイント近くの下に回転軸があり、橋の中央部分を回転させて陸側に寄せてしまい込む。
S字橋の回転軸(写真左側、橋の下)
発想が面白いだけでなく、鋼コンクリートの接合部や、アーチリブとその上の床版との連結の見せ方など、隅々にセンスのいい詳細構造が見えます。アーチは太鼓状なので、水平力はあまり出ないようになっています。上手いです。
高さは12m。周辺の建物は高いものが少ないので見晴らしがいい。
自動車道A7のPurmerend-zuidを出て東へ数分。鉄道だとアムステルダムからzaandam乗り換えで行けるようです。
地図を見ると、住宅地の大部分はきれいな土地区画がされており、アムステルダムのニュータウンになっています。

2017年3月4日土曜日

ライン・ヘルネ運河に架かるねじねじ橋

ライン・ヘルネ運河に架かるねじねじ橋 (Slinky Springs to Fame, L=406m, Main bridge=20+66+20m, 2011)

行ってみて予想以上に素敵だった橋。
EMSCHERKUNST 2010というラインヘルネ運河沿いにアートプロジェクトがあった時に作られた歩道橋です。別のページの踊る鉄塔もこの時の作品の一つです。
設計はTobias Rehbergerというアーティストのデザインにシュライヒ事務所(schlaich bergermann partner, Madako)が設計をしています。

鋼材のリボンの厚さは12cm。リボンの上にプレキャストコンクリートスラブが載せられています。

ねじねじの外見にひっかかって、奇をてらった学生の練習作品だと思ったら大間違い。そこそこ長い支間を持つ吊り床版橋です。細い橋脚が洗練されていてまた美しい。
構造がいいと、俄然、ループのトンネルのデザインやカラフルな床版もよく見えてきます。アーティストと構造デザイナーの良い出会いですね。
吊り床版のリボンを支えるアンカー

公園の整備も完璧で、橋の下も除草されていて橋の裏まで見て回っても見学が気持ちよかったです。
場所はオーバーハウゼン。ラインヘルネ運河。国道223号線沿いの公園にあります。

オランダの自動車専用道路上の木製跨橋

オランダの自動車専用道路上の木製跨道橋 (Botterbridge, Lc=50m, 2014)

設計はZJA。
オランダの自動車専用道の上に架かる木製の斜張橋です。
木材が使われているのは、主塔と、桁の橋軸方向の梁材。橋脚やデッキは鋼製、コンクリートです。

うっそうとした森の中にあるように見えて、自動車道で分断されているDrielandenとStadsweidenの住宅地をつないでいるので、自転車の行き来は結構ありました。

最近、2年経過した庭の工作物の腐食対策で、木材の使い方を誤ったときの傷み方の早さを身を以て知ったので、木材の使われ方が気になります。

屋外の木材は、
・無対策で2-4年で腐朽
・加圧注入防腐剤で10年
・木材保護着色塗料では、キシラデコールのような含浸型で2-3年の塗り替え
・造膜型で4年での塗り替え
が目安だそうです。(参考)防腐処理ごとの耐久年数、林産試験場

1999年に耐久性が高いとされるボンゴシ材を使った愛媛県の木橋(南予レクリエーション都市4号公園)が、架設後10年で落橋しました。このときは、滞水しやすい接合部が菌で急速に腐朽したそうです。
「絶対腐らないと言う思いこみ(設計上の配慮不足)が、部材を過酷な環境に追い込み、今回の事態(耐久設計上の弱点である接合部の腐朽による断面欠損、落橋)を招いたと考えられる。」との指摘がありました。

国内の調査で、屋根付きの橋や、構造が床版の下に隠れた上路橋では、橋梁の状態がよいとの報告があります。それは当然で、1300年の耐久性を持つ法隆寺の建材は、雨に直接さらされないように設計されていてこその耐久性です。
人にも環境に優しい、1000年以上の耐久性がある、とイメージ先行ではなく、鋼、コンクリートに使い方があるように、木材は設計者の能力がより問われる材料と思います。

木橋として著名な錦帯橋も40年、50年を目処に架け替えることが望まれるとされています。橋板が腐ったら取り替えるなど、堅い維持管理があって今に伝えられていると考えられます。

さてハイデルウェイクの橋、
橋面はウッドデッキではなく、雨水が直接木材にあたらないように計画されています。高欄はさわやかなデザインです。丸太と曲線の線形が森の小道感を出していて人工物のインパクトが低減されています。
アプローチ部の橋脚、クロスビームは鋼製。支間は7,8m程度で、無理はしていない。橋脚が多いわりに、桁と橋脚がデザインで分離されているのですっきりした橋に見えます(下写真)。
まだ、google earthの衛星写真にも写ってないのに、既に外に露出した主塔の表面処理は洗い流されています。浸透材料は残っていると思いますが。

この橋は、床板は木材は選定されていませんでしたが、美しい橋を歩くと、歩路にウッドデッキを使った橋は非常に多いです。
これらの橋は、木材の使い方に習熟した上で、構造物の寿命と架け替え費用を十分認識しておかないと、将来、哀しい事態を招きそうな橋はだいぶある気がします。
写真は建設から17年経ったパリ、ソルフェリーノ橋のデッキ。そろそろ大幅改修の時期に見えます。
2008年完成のスペイン、サラゴサの第三ミレニアム橋の歩道。ステップ気候に属し、雨が非常に少ないため10年経っても健全。ただ、歩道に屋根がない左側から保護膜が傷んでいる。自然は見逃さない。

露出しているウッドデッキを見ると、一時的なパビリオンならいいけど、将来、社会事情が変わってメンテされなくなったことは心配しないのだろうかと考えてしまいます。
私は、やはり無理せず木材は屋根の下、という使い方でいいと思います。

ということで、私のこの橋の感想は、アプローチの橋のデザインはいいけど、自動車専用道という重要度の非常に高い交差物の上に木の橋を架けるのは、ちょっと大胆ではないかい?です。

場所は、オランダ、ハイデルウェイク(Harderwijk)。自動車専用道A28のハイデルウェイクのサービスエリアの近くです。サービスエリアの金網のフェンスに開口があり、そこから遊歩道を歩いて橋にアクセスできました。いつまで空いているか分かりませんが。
近所にもう一つ同じ設計者による大きな木橋があります。

2017年3月1日水曜日

レッジオエミリアAV駅に見る廉価版カラトラバ

レッジオエミリアAV駅に見る廉価版カラトラバ (Reggio Emilia AV Mediopadana station, 2013)

フレッチェロッツァとイタロが止まる高速鉄道専用駅。
サンチャゴ・カラトラバの設計。
イタロは2014年からローマ・テルミニ駅に乗り入れを開始して便利になりました。ジウジアーロデザインのフェラーリカラーの車体に乗りたかったので、高速鉄道駅の見学は一石二鳥でした。
うねる構造は457本の梁部材を1m間隔で並べて作られています。
カラトラバによる同じように梁部材を連続させたベルギーのリエージュ駅と比べると、工作の手間が簡素化されています。こちらは、等断面の矩形断面で、楕円形断面のリエージュ駅の屋根材と比べると製作は格段に簡単です。
財政難のイタリアではカラトラバといえ例外ではないのかと思いました。
部材は共通化が図られています。謎のふさぎ孔やつなぎ材がずれているのがちょっと気になる。

しかしながら、このような単純な部材を組合わせて、利用者に驚きを与える形態を作り上げるのはさすがにカラトラバです。制約の中で目的を達成してこそエンジニア、です。
その気持ちは、近くのカラトラバ設計の無駄に長大なアーチ橋で軽く裏切られますが。
ホームの列車が止まる付近からガラス屋根がはめ込まれている。角柱をパイプでつないで曲線を表現する。連続した骨による造形はカラトラバの真骨頂。
見学の注意点として、この駅は高速鉄道しか止まらず、しかも全ては止まりません。終電早いです。レッジオエミリアの街の中心である中央駅とは4kmくらい離れているので、特にサマータイム中は注意しないと帰りの足が無くなります。
駅の中は、切符売り場と売店が2,3軒。駅前は駐車場とバス停だけで2016年時点で土地区画だけされている状態です。市の中心とつながる在来鉄道も本数は非常に少ないです。私は、近くの橋を見学した後、駅の南西側のHotel Remiliaのレセプションでタクシーを呼んでもらって市街地の中央駅に行きました。
在来線のレッジオエミリア駅。周辺は中華料理屋や漢字の看板の店が目立ちます。