オランダの自動車専用道路上の木製跨道橋 (Botterbridge, Lc=50m, 2014)
設計はZJA。
オランダの自動車専用道の上に架かる木製の斜張橋です。
木材が使われているのは、主塔と、桁の橋軸方向の梁材。橋脚やデッキは鋼製、コンクリートです。
うっそうとした森の中にあるように見えて、自動車道で分断されているDrielandenとStadsweidenの住宅地をつないでいるので、自転車の行き来は結構ありました。
最近、2年経過した庭の工作物の腐食対策で、木材の使い方を誤ったときの傷み方の早さを身を以て知ったので、木材の使われ方が気になります。
屋外の木材は、
・木材保護着色塗料では、キシラデコールのような含浸型で2-3年の塗り替え
が目安だそうです。(参考)防腐処理ごとの耐久年数、林産試験場
1999年に耐久性が高いとされるボンゴシ材を使った愛媛県の木橋(
南予レクリエーション都市4号公園)が、架設後10年で落橋しました。このときは、滞水しやすい接合部が菌で急速に腐朽したそうです。
「絶対腐らないと言う思いこみ(設計上の配慮不足)が、部材を過酷な環境に追い込み、今回の事態(耐久設計上の弱点である接合部の腐朽による断面欠損、落橋)を招いたと考えられる。」との指摘がありました。
国内の調査で、屋根付きの橋や、構造が床版の下に隠れた上路橋では、橋梁の状態がよいとの報告があります。それは当然で、1300年の耐久性を持つ法隆寺の建材は、雨に直接さらされないように設計されていてこその耐久性です。
人にも環境に優しい、1000年以上の耐久性がある、とイメージ先行ではなく、鋼、コンクリートに使い方があるように、木材は設計者の能力がより問われる材料と思います。
木橋として著名な錦帯橋も40年、50年を目処に架け替えることが望まれるとされています。橋板が腐ったら取り替えるなど、堅い維持管理があって今に伝えられていると考えられます。
さてハイデルウェイクの橋、
橋面はウッドデッキではなく、雨水が直接木材にあたらないように計画されています。高欄はさわやかなデザインです。丸太と曲線の線形が森の小道感を出していて人工物のインパクトが低減されています。
アプローチ部の橋脚、クロスビームは鋼製。支間は7,8m程度で、無理はしていない。橋脚が多いわりに、桁と橋脚がデザインで分離されているのですっきりした橋に見えます(下写真)。
まだ、google earthの衛星写真にも写ってないのに、既に外に露出した主塔の表面処理は洗い流されています。浸透材料は残っていると思いますが。
この橋は、床板は木材は選定されていませんでしたが、美しい橋を歩くと、歩路にウッドデッキを使った橋は非常に多いです。
これらの橋は、木材の使い方に習熟した上で、構造物の寿命と架け替え費用を十分認識しておかないと、将来、哀しい事態を招きそうな橋はだいぶある気がします。
写真は建設から17年経ったパリ、ソルフェリーノ橋のデッキ。そろそろ大幅改修の時期に見えます。
2008年完成のスペイン、サラゴサの第三ミレニアム橋の歩道。ステップ気候に属し、雨が非常に少ないため10年経っても健全。ただ、歩道に屋根がない左側から保護膜が傷んでいる。自然は見逃さない。
露出しているウッドデッキを見ると、一時的なパビリオンならいいけど、将来、社会事情が変わってメンテされなくなったことは心配しないのだろうかと考えてしまいます。
私は、やはり無理せず木材は屋根の下、という使い方でいいと思います。
ということで、私のこの橋の感想は、アプローチの橋のデザインはいいけど、自動車専用道という重要度の非常に高い交差物の上に木の橋を架けるのは、ちょっと大胆ではないかい?です。
場所は、オランダ、ハイデルウェイク(Harderwijk)。自動車専用道A28のハイデルウェイクのサービスエリアの近くです。サービスエリアの金網のフェンスに開口があり、そこから遊歩道を歩いて橋にアクセスできました。いつまで空いているか分かりませんが。
近所にもう一つ同じ設計者による大きな木橋があります。