2017年5月6日土曜日

ビスカヤ橋、ビルバオグッケンハイム美術館前の栄光

ビスカヤ橋(1893、Puente Colgante, Vizcaya Bridge, Lc=164m)

設計はアルフレッド・デ・パラジオと、構造エンジニアのアルノダン。
完成は製鉄所が複数建設された19世紀後半の1893年。エッフェル塔の4年後。ブルックリン橋の10年後。
かつて鉄鋼業、重工業で1950-1960に最盛期を迎えたビルバオ都市圏のもっとも入り江側の都市に架けられた橋。橋の上を直接走行するのではなく、吊構造からぶら下がったゴンドラに自動車などを乗せて往復します。上流の港、バラカルド市、ビルバオ市に航行する大型船舶の航路を確保するためにこのような形式が提案されました。
繊細な骨組みとケーブル構造は、当時相当チャレンジした設計であったと思います。
2006年に世界遺産登録されています。
今も自動車6台分のゴンドラは満杯で往復しています。年間600万人の歩行者と50万台の車両が往復。

ビルバオ市の開発についてふれられた本(サステイナブルシティ、岡部明子著)で、同様に鉄鋼業が栄え、1970年代に基幹産業が衰退した都市を再生を図った都市として、ビルバオ市と北九州市が比較されているのを見ました。北九州市でも、官営八幡製鉄所の用水確保のために設けられた河内貯水池にかかる、当時国内では挑戦的な技術で架けられた南河内橋があり、色も似た感じで思い出しました。
南河内橋は1926年なのでビスカヤ橋がお兄さん、というより30年経っているのでお父さんです。
北九州市の南河内橋。勝手に兄弟橋。
1893年ごろは、橋梁の材料がちょうど錬鉄から鋼鉄に入れ替わったころです。ビスカヤ橋はスレンダーな部材、鋼製ケーブルで構成されています。桁はスペイン内戦で破壊されたものの、塔は初期のものだそうです。
非常に細い部材で組み上げられた主塔。ダイヤフラムのブレースがないのがちょっと落ち着かない。ケーブルが桁位置で橋軸、直角方向に支持しており主塔は安定している。
主塔基部。耐水と腐蝕が気になるディテイル。
トラス桁の高さは45m、塔の高さは75m。飛鳥II(45m)くらい。航路高の高さが往時の繁栄を偲ばせます。

古い絵では塔付近は斜吊りを併用したブルックリン橋タイプのケーブルシステムが描かれたものもあり、構造も更新されているかもしれません。
荷重が骨組みの桁だけで、路面も自動車荷重もゴンドラ分だけという経済設計なので、ケーブルの太さがこのクラスの吊橋のイメージとはまったく違う太さです。
アンカレイジは分離式。経済設計。
上の写真でアンカレイジから出ているケーブルで下に一本垂れ下がっているように見えるケーブルは桁位置で塔に連結しています。
塔の桁位置では、横にもケーブルが張られており、塔の直角方向に作用する外力をケーブルでとり、塔の座屈長も短くしています。
アクセスは地下鉄Portugalete駅から坂をぐんぐん下ります。急坂には動く歩道がついていて楽ちんのはずでしたが、朝が早くて動いていませんでした。
朝ご飯は、橋のたもとのカフェ。となりのおじいちゃんは朝からカーニャでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿