2017年12月9日土曜日

曲線の線形を持つトレインシェッドその1(ニューカッスル駅とヨーク駅)

ニューカッスル駅(Newcastle Central Station 1850)

プラットホームが曲がっていて、かつ、トレインシェッドが超かっこいい駅を2つ。
一つは世界最初のアーチリブ式トレインシェッドのニューカッスル駅。
建築家John Dobsonジョン・ドブソンが、鉄道技師Thomas Prosserトーマス・プロッサーやスティーブンソンと協力して設計。トレインシェッドが完成したのは、近くでタイン川を渡るスティーブンソン設計のハイレベルブリッジが開通した翌年の1850年。
平面に半径240mの曲線線形を持つトレインシェッドはタイロッドを持つアーチの三連で16.8mx3=50.4mのスパン。
屋根は鉄骨アーチとガラスの組合せです。

旅客鉄道として世界最初の駅はスティーブンソンによるリパブール・クラウンストリート駅で1830年です。1837年にはブルネルによる第一期パディントン駅(木造のキングポストトラス)が完成。この最初の駅から15年後に、このような魅力的な大空間が鉄構造で生み出されています。

パディントン駅がブルネルにより現在の鉄製アーチタイプになったのは1853年なので、大規模なアーチリブ形式としては、このニューカッスル駅が世界最初のアーチ式トレインシェッドです。
それまでに、鉄を使ったトレインシェッドはありましたが、形状としては三角形の切り妻型になるポロンソートラスや、ポストトラスでした。
 2番線のとなりに9番線。ややこしい。 
ニューカッスル駅のアーチはタイロッドが用いられています。
装飾は比較的おとなしい

ヨーク駅 (York railway station, 1839開業、現在のトレインシェッド1877年)

ニューカッスルから列車でまっすぐ行けば一時間、ヨークに到着です。
イギリスは、特急料金がなく座席指定もなくても乗車できるので、ブリティッシュレールパスがあればチケット購入の時間を考える必要がなく本当に楽です。

ニューカッスル駅の設計に携わったトーマス・プロッサーは現行のヨーク駅(1877年。スパン24.7+16.8+16.8+13.1=71.4m)の設計をしています。
ヨーク駅はニューカッスル駅と同様に平面曲線を持つトレインシェッドで、大変旅情をかき立てられる駅舎です。
天井が高く、塗装のリハビリは丁寧にされているようで、古い重苦しさはなく、明るい気持ちで町の玄関に到着します。


見た目はよく似ていますが、ヨーク駅にはタイロッドがありません。わずかな差ですが、タイロッドがないと煩雑な印象がなく上品な印象を受けます。
アーチの基部にかかる水平力が小くなるように、アーチ橋と比べてアーチライズが高いようです。ヨーク駅は幅、高さ比が8:5。柱部分を除いてもアーチのライズは1/3はありそうです。一般的なアーチ橋1/5-1/6に比べるとドームに近い印象。

また、ニューカッスル駅から27年経って、余裕が出てきたのか、装飾や部材の形は凝っています。

ウェブの穴抜きがしゃれている
アーチリブの接合部を剛にしたかったのか?構成する曲線も主張があって面白い

なお、ヨーク駅もニューカッスル駅も、1.5世紀の間に拡張を重ねており、プラットフォームはどこにあるのか探すのが大変です。1列のホームに2つ番号があるのは当たり前。スモールaがついたり、櫛形ホームだったり。
ヨーク駅はちょうど訪問した日が有名な記念日で、酔っぱらいが充満していたのですが、トイレのある4番線の場所が番号順にならんでおらず、駅構内の跨線橋を右往左往する人(私を含む)が見られました。 2番線の向こうが8番線で。。
 ヨーク駅構内のパブにて。タップ数の多いこと。

参考 19世紀から20世紀前半のヨーロッパの駅建築空間~駅本屋とトレインシェッドの関係に着目して~ 金井ら 土木計画学研究・論文集 No.17 2000.9

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