2016年10月2日日曜日

ズウォーレの薄い床版歩道橋

ズウォーレの薄い床版歩道橋 (Rodetorenbrug=Red tower bridge, 全長81m, 2013)

オランダのズウォーレの城壁に囲まれた中世の市街と西側をつなぐお堀を渡る歩道橋。
設計はNEY & PARTNERS。
橋名のRed Towerは城壁から外へ出るゲートの名前だったようで現存しません。近くに赤い塔もなく、橋にも赤い塔がないので、だいぶ調べてしまいました。
といってもネットでGoogle翻訳を活用して見つかってしまうのでお手軽な時代です。
橋の特徴は薄い床版と薄いアーチ。板の剛性を”曲げに耐力がある部材、圧縮に耐力がある部材”として考えた、目からうろこの構造。
通常、道路橋の設計図を描きながら、「ここは力が入らないから最小厚6㎜でいいや、でも溶接でやせ馬がでちゃうなー」 なんてペラペラの紙のようなイメージで鉄板を扱っていますが、実際、6㎜の板でも人間に力で曲がるようなものではないです。

それを歩道橋の荷重なら板で十分とばかり活用しています。
トラスを組んでいるので、アーチリブと呼ぶかわかりませんが、基本的に圧縮力が作用する下のリボンは6㎝の板です。
床版はアーチ構造とするとどちらかと言えば引っ張りですが、床版なので曲げ応力がかかるのと、トラス作用があるので径間中央部はいくらか圧縮力がかかりそうです。この床版の厚さは2㎝です。
その圧縮力として想定外の力が働いてしまったのか、開通直後に、橋台と桁の隙間が十分ではなく、夏場の温度変化により桁が伸び、桁に作用した圧縮力により床版が波打ってしまい、西側伸縮の補修のために完全開通は1年遅れになったようです。

設計者の気合を感じるのは、設計では板だけで十分としても、いくらか想定外の軸力や製作・架設時の曲げを考えて、橋軸方向にリブの1本でも入れておきたくなるところですが、橋軸直角方向にしか補強を入れていません。
桁の裏側に橋軸方向に小さい補強を付けても誰も見えないので、こだわりですね。
私なら心配でたぶんトラスの内側に低いでっぱりを2列つけていると思います。

見に行った時期は9月の暑い時期でしたが、大きな変形はありませんでした。赤い服の人の先で少しうねって見えるのはその時の変形の名残でしょうか。

場所はGoogle mapの衛星写真にまだ出ておらず、迷ったので座標を載せておきます。
52.51373, 6.08906
雰囲気のよさそうな旧市街をかけ抜けてしまったので、次はテラスで休みながらゆっくりと散策したいです。

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